BOA SORTE KAZU

  • Home
  • Message
  • Profile
  • Status
  • Column
Menu

BOA SORTE KAZU

“サッカー人として”  2010年02月19日(金)掲載

“サッカー人として”
2010年02月19日(金)掲載

体をつくり込む喜び

 「カズ、まだまだいくでえ」。練習試合のハーフタイムで岸野靖之監督の声がかかる。「もちろん」。僕は喜んでピッチに戻っていく。


 キャンプでこれだけ実戦形式の試合に出たのは何年ぶりだろう。沖縄で2日続けて紅白戦を65分と45分、宮崎でも練習試合。この数年、開幕前は長くても45分ほどでストップがかかっていた。今年はすでにキャンプ3年分くらい試合で走っている気がするよ。


 体のAが痛むとBの酷使につながり、症状Cの危険があるから休むべきだ――。今はそうした知識があり過ぎるほどに選手に行き渡っている。かつての僕は「歩けりゃ試合は出られる」。本気でそう思っていたし、そうしてきた。でも今は体が負荷に対して敏感だ。気温に湿度、ピッチの硬軟も体は感じ取る。今は大丈夫、でも半日後だってどうなるかは分からない。そんな世界もプロにはあるんだ。


 こうしてびしびし使われるのは願っていたことだった。僕は45分でなく90分戦うことを前提にシーズンに臨んでいる。でなければグアムからあれだけ体をつくり込まないよ。キャンプでは最低でも60分は実戦をしたい。そして体の反応を見ておきたい。開幕後にぶっつけで90分間出場したシーズンはどうしても体がきしんだ。段階を踏んでいない心身はどこかで無理をする。


 走行テストのように一度エンジンを吹き上げ、タコメーターをぐっと上げる。そしてサスペンションの具合を確かめる。体のどこが強くなったか、逆に弱まったか。必要となる強化と休息を計算し、また体に加えていく。一日一日それを繰り返した僕というマシンは、疲労と戦いながらもやはり強くなっているんだ。ケガはしてはいけない。でもケガを恐れるのもだめなのだと、改めて感じるよ。


 もちろんここまでいい感じで来ているとしても、この先も大丈夫という保証などない。公式戦で勝てなければ自己満足に終わる。でもね、そうした一つ一つの自己満足がなければ、次の大きなステップへ進むこともできないものなんだよ。


 スーツに着替えるとウエストがベルトの穴一つ分ほど緩くなっている。もともと余分なものがない僕の体から、さらに余分が削ぎ落ちる。ほおもスッキリ、すがすがしい。サッカーに浸れるキャンプは楽しいね。