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試合に出られることは、まあ言ってみれば、準備してきたことに対してのご褒美だと思った方がいいんです。
2月7日、Jリーグ特別大会の開幕戦で先発した。走って、ボールを触って、サッカー選手であることの充実感を得られた20分間だった。
「10分間や20分間なら、引退したとしてもやれるでしょ」と言う人がいるかもしれない。その通り。プレーそのものは、ある程度の年齢であってもできるでしょう。
でも、選手がその20分にたどり着くには、毎日みんなと同じ練習に向き合わなきゃならない。20分間出る人用の練習などない。個々に多少の配慮はされても、結果的に出場が5分間になろうが90分間になろうが、等しい量と質の練習を消化するのがいわば“生存ゲームのルール”。それを戦えなければ、監督に選ばれ、出場する資格は与えられない。
試合は僕らが最も、花咲くところ。でも本当に重要なのって、そこまでしっかりと準備できたかどうか。情熱を持って日々、やれたか。そっちの方がよほど大変なんだ。
華やかな花を咲かせるには、見栄えはしなくとも強い根っこが要る。ちょうど1カ月、自主トレからチームキャンプで取り組んだことが良い根になってくれた。
僕には何かと記録がついて回るのだろうけれど、58歳がJ3で最年長得点を挙げたとしても、40歳がJ1で取った得点の方が同じ1ゴールでも価値は高い。カテゴリーの価値とはそういうものだ。
だから選手もチームも、上を目指す。階段を上がろうとする。J3のカテゴリー内で別チームへ移籍しても、100万円の年俸が110万円に変動するくらい。J2、J1へとステップアップするタイミングで初めて、3倍、4倍と上がっていく。それがサッカーキャリアにおける万国共通のルール。この手の階段は世の中にもあるんじゃないかな。
福島ユナイテッドFCの選手たちもポジティブな意味で個人昇格したいと思っている。クラブもJ2昇格を明確に目標としている。その時にちゃんと戦えるチームを、というコンセプトで日々やっている。
みんなが目指す視線のようなものを、合わせていくとしたら「上」だと思うんだ。「下」に合わせるのは合理的じゃない。だとすれば「下」はついていくしか、頑張るしかないよね。
そう考えれば、Jリーグのシーズン移行は避けるべきでもない、自然なこと。もちろん雪国のクラブへの配慮はなされるべきだ。そのうえで、欧州トップのカレンダーが動いていて、アジア・チャンピオンズリーグもそれに合わせるなかで、僕らがそろえないのでは不都合が多い。
移行に伴って今、シーズンが4カ月余りと特殊な形になっているけど、J3勢がJ2勢と戦えるのはとてもいい経験だし(J2勢からすればそうでもないのかな)、PK戦もそれでお客さんが楽しんでくれる要素が増えるなら、いいじゃないですか。
「もう少し行けそうでしたね。でも我慢もしないと」。7日の交代時、寺田周平監督から声をかけられた。周囲は次のこと、先も見据えて考えてくれている。僕個人、水があふれるとなかなか戻しにくい難しさは感じるところで、1歩目はこれで良しかと。
そのうえで出場時間を少しずつ延ばしていきたい。「だいぶハードワークをしていましたね」とJリーグ監督経験のある知人からはLINE(ライン)がきた。その水準、プレー強度を維持したままで時間を延ばせれば、よりチームの役に立てる。階段を一つずつ上がっていきたい。上がりたい、と願うだけじゃダメだね。ただ、今すぐにと焦らず、少しずつ、でいいと思っている。
言い換えれば、根なんてすぐには張れないし、広げる過程では汚れもするだろうし、ご褒美なんてすぐにはありつけませんよ。