BOA SORTE KAZU

  • Home
  • Message
  • Profile
  • Status
  • Column
Menu

BOA SORTE KAZU

“サッカー人として”  2010年03月19日(金)掲載

“サッカー人として”
2010年03月19日(金)掲載

ファンとの心地よい距離感

 先日、地域貢献活動なるもので横浜・三ツ沢そばの商店街へ出向いた。好物のおはぎを買って、焼き鳥をつまんで、押し寄せるサインの求めに応じていく。


 出迎えてくださるお年寄りが横浜FCのマフラーを巻いている。「試合、見に行ってます」。こういう方々が応援してくれているんだと、うれしくなる。有り難さを思い出す。試合のピッチではこうした存在になかなか気づかない。行くまでは気の乗らないときもあるのに、行けば不思議とモチベーションをもらう。生の声と接するのもいいものだね。


 僕が小学生の時、学校のすぐそばに劇団四季がやってきた。舞台裏がどうなっているのか興味津々だった僕は、忍び込んで衣装や化粧の様子に見入り、「何か面白いことやって」とせがんだ。逆の立場ならさぞ嫌な小僧だったでしょうね。


 そこで目にした事は43歳のいまも忘れることはない。だから僕ら選手が学校を訪ねて語ることも、彼らの心の片隅に何かしらを残すんじゃないか。ヴィッセル神戸時代から続けている小学校訪問は、今年でもう8年目。当時の子どもたちも20歳近くになったのかな。真剣な顔つき、真っすぐな問いかけ。あの子たちとはいまもどこかでつながっている気がする。


 とはいえ地域活動は常に歓迎されるとはいかず、若手が駅前で寂しく立つだけの日もあるとのこと。恥ずかしいと感じる心情もよくわかる。スタジアムで魅了してこそプロ、あの場でしか見られない、会えないというのも一つの要素。近すぎ、慣れっこでは薄れる感動もあるだろうし、ほどよい距離感を大事にしたいね。


 サッカー人気について考えると、かつての読売クラブを思い出す。「なんで読売ばかり勝つの」「オーナーは剛腕のあの人。嫌いだね」「カズってカッコつけやがって」……。良かったのは、チームなり行動なりがサッカー界を超えて人々の興味の対象だったこと。


 いま、そんな風に話のネタになるクラブがいくつあるか。強いチームはある。でもホームタウンの外では認識はされても、興味までは持たれにくい。一地区限定の関心で終わりがち。


 良くも悪くも物議を醸し、ファンもアンチも引き寄せる。そんな存在が再び現れたら、停滞気味といわれるこの業界の復活にも一役買うと思うんだけれど。