BOA SORTE KAZU

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BOA SORTE KAZU

“サッカー人として”  2009年11月27日(金)掲載

“サッカー人として”
2009年11月27日(金)掲載

移籍ビジネス育成を

 世の中でサッカーほど、自分の所属先が替わる職業も少ないんじゃないかな。ひとところに5年もとどまれば、もう古株。4年前に横浜FCに加入したときは“新米”だった僕も、すっかり古株だ。ブラジルでプレーしていたころを含めると、もう十数回も移籍したことになる。もう慣れっこだし、3カ月だけのレンタル移籍だってあった。


 サッカー界では小クラブから中堅へ、中堅から大クラブへと移籍する時が給料アップの最大のチャンス。でも、日本は移籍マーケットがそこまで成熟していない。アマスポーツの延長で発展してきた経緯もあり、選手の価値を上げて売るというメンタリティーも根付いていないよね。


 日本代表の中核選手が移籍すること、まだ少ないでしょ? 仮にガンバ大阪が遠藤保仁選手を手放すとしよう。ほしいクラブがあるなら売ってもいいんだ、その代わりにうんと高い金額で。移籍による収入をクラブが若手獲得などに回せば、放出した方もチームの成長サイクルが続く。でも、今の日本の市場ではそういう大物の移籍がビジネスとして成立しない。


 サッカー選手は株にも似ている。その株を0円にして捨てる持ち主は、海外では失格だ。僕がクロアチア・ザグレブで戦力外通告を受けたとき、クラブは移籍金ゼロで獲得したはずの僕に30万ドルを超す移籍金のようなものを設定した。この値段のために移籍先はなかなか決まらなかったんだ。でも、クラブは何とか利益を生み出そうとする。それが経営だから。


 オフが近づき、今年もいわゆるベテラン切りが伝えられている。「若い選手に切り替えるため」。毎年のように耳にする言葉だけど、これを口にするのは実は結果を出せていないチームが多い。うまく回っているチームほど、むやみに選手を切らないものだ。


 優勝も降格もなくなったリーグの終盤、ブラジルでは戦力から外れたベテランを練習試合や公式戦にバンバン使う。「戦力外にはしたけれど、まだこんなにできるから」と周囲に示すかのように。選手を少しでもいい状態で移籍させようと努めるのは、クラブの義務でもあるだろう。責任あるクラブに若者は行きたがるし、親も子どもを預けたがると思うんだ。