BOA SORTE KAZU

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BOA SORTE KAZU

“サッカー人として”  2023年06月09日(金)掲載

“サッカー人として”
2023年06月09日(金)掲載

じっとしてはいられない

 挑んでみてマイナスになることなんて、一つもないのかもしれない。ポルトガルで半年近く過ごして、そう思う。


 シーズン最終日、半数の選手から「ユニホームをくれないか」と頼まれた。「君の日々の態度、練習への取り組み方から、サッカーへの姿勢を学びました」と別れの言葉をもらいもした。「戻ってくるのか」「まだ分からない」「ぜひ、一緒にやりたいな」。そんなやり取りを交わし、オリベイレンセを後にしてきた。


 人々とのつながりができることが、何よりの財産。そしてそれは現地に身を置いたからこそ手にできる。


 あちらでは練習での一コマから、ゴールが、そのためにシュートを打つことが褒められる。シュートへの寄せが甘いとしてもさほど問題視されない。日本だと「その守備の緩さだから得点されるんだ」と言われそうな場面でも、攻める側が良いからだ、となる。同一の局面の裏表なんだけどね。


 最終戦、出場した僕におあつらえ向きのシュートチャンスが巡ってきた。でもパスは出てこず。「すまん、見えなかった」と試合中に仲間から謝られた。これもたぶん、自分から攻めることがまずは頭にあるから。みんな、どこからでもシュートを打つし、打って攻めて終わればひとまず「ブラボー!」。


 この文化で過ごしていると、僕も一丁狙ってやるかという気になってくる。攻める選手が育つのだろうね。


 今回は契約の半年間で仮に出場なしに甘んじようとも、このまたとない機会が自分のキャパシティーを広げるはずだと思った。これが1年、2年であれば、もっと出場にこだわる選択をしたかもしれない。


 日々の激しい練習についていくことでクタクタだった。そうやって一日一日感じたものが体に染み込み、血肉となって生きている。どこで生かせるかは即答できないけれども、その総体があるから、ある程度自分はどこでもやっていけるんだと思う。


 「思うより動け」で、じっとしてはいられないたちでね。動いていないとだめになりそうで。早速、自主トレを開始したのも予定通り。いまは挑戦のインターバルの感覚かな。


 転々と、後にした場所への名残惜しさみたいなものはない。何かの拍子にまた行くさ、離れてはいないさとどこかで思っているのかもしれない。1999年に後にしたクロアチアにも荷物を一部、預けてある。でもあれ、まだあるのかな。