BOA SORTE KAZU

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BOA SORTE KAZU

“サッカー人として”  2023年05月26日(金)掲載

“サッカー人として”
2023年05月26日(金)掲載

「99%無理」も恐れぬ15歳のように

 「99%、無理だよ」


 静岡学園を中退してブラジルでプロになると宣言した15歳の僕に、サッカー部の監督はそう言った。


 いま振り返れば、至極まっとうな大人の意見だと思う。ただ、何しろ当時の僕はうまくいかないなんて考えもしないし、リスクという発想もない。1%あるんだろ、という無鉄砲な熱意しかなかったのだから。ブラジルに来てみて、監督の言葉は正しかったかも、という現実に気づく。


 自分が属したのは16歳までで構成されるチーム。その上に17歳のジュベニール、そしてプロの1つ手前の18歳から20歳までのジュニオールのカテゴリーがあった。寮の6人部屋では5人がジュベニールの先輩。体つき、技術、スピード、何もかも自分とはレベルが違う。その人たちでさえプロになれるかは分からない。


 その一段上、またその上にあるプロは、とてつもなく先にかすむ世界だった。あの時の途方のなさを、挫折感というのかな。


 この春、ポルトガルにきた巡り合わせで、あのときに同部屋だった先輩らとも話す機会ができた。現役を続ける僕を「俺たちにとってお前は誇りだ」と言ってくれた。「1%」から始まったことを思い返せば、信じられないし、これほど光栄な励ましもない。


 ある意味で、大人になるということはつまらないね。「しっかりした人間」という足かせを自分にはめ、なくてもいい常識やつまらないものにとらわれがちになって。物事を分かってきた今の僕は、15歳の三浦青年に「むちゃをするなよ」と忠告しかねないんだろうな。


 20代のころは眠る時間さえ惜しかった。延長戦になったら女性との約束に間に合わないじゃないか、と頭によぎった試合もあったっけ。褒められたものでないけれど、何も恐れずに「俺はできる」と突っ走れた自分が懐かしくもある。許される範囲内で、あの常軌を逸したエネルギーを取り戻してみたいとも思う。


 オリベイレンセでの挑戦も残り1試合。5試合でベンチ入りして2試合に出場したけれども、充実感は得られていない。ただ、結果がどう転ぶにせよ、そこへ立ち向かうエネルギーは残っている。


 生活が豊かになって余裕ができれば、心にもぜい肉がつきがちになる。だけど僕の心は相変わらず聞き分けがよくないみたいだ。「99%無理」だとみなされようが、望むものに挑み、手にしてみたい。とらわれずに生きていきたい。あの15歳のころのようにね。