BOA SORTE KAZU

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BOA SORTE KAZU

“サッカー人として”  2022年07月29日(金)掲載

“サッカー人として”
2022年07月29日(金)掲載

フランスの熱海、日本のモナコ

 色々な意味で世界との距離が近くなっているのだなと、パリ・サンジェルマンの日本ツアーで感じることができた。以前よりもマーケットを世界へ広げなければならない事情もあるのだろうけど、練習も公開するなど親睦的だし、日本にアプローチしようとする姿勢がとても垣間見えた。


 「自分もあそこでプレーを」と夢を膨らませた子どもにとって、世界は僕らの少年時代より、もっと身近なものなんだろう。欧州の名門で日本選手が活躍した例があるだけに、道をイメージしやすいはずだから。


 ネイマールやメッシ、エムバペには「どこか遊び心がある」と、対戦した選手が述べていた。戦術と規律が行き届いた現代サッカーのなかで、それに従いつつも、あの3人はプレーにアイデンティティーなるものが明確に出てくる。戦術で防ぎきれないプレーで、人力とカネが投じられた高度な対策をも上回っていく。


 あの世界選抜を見に来た大観衆に対して、同時期の日本代表の東アジアE-1選手権は来場者数が寂しかった。でもこれは比べるべきものでもない。人気が浮き沈みはしても、代表という存在はある種の市民権を得て、認知されている。ただ、見るものがより選ばれる時代には、サッカーも「うまい・強い」だけでは人を引きつけるのに十分ではないのかもしれないね。


 パリ・サンジェルマンも音楽性、ファッション性、芸術性などを加味してブランディングをしている。そう考えるとJリーグもサッカー以外で人に訴えかける軸がもう一つ必要なんだろう。若い世代の観客は相対的に少ないと聞くからね。


 ある日、モナコを訪れている知人から連絡がきた。「羨ましいね」という反応を期待したみたい、日本人は洋物に弱いから。僕は答えた。「ああ、フランスの熱海でしょ、あそこは」


 イタリアのジェノバからモナコへ足を踏み入れる際の光景と、高速道路を抜けて視界の下に飛び込んでくる熱海の景観は、うり二つだ。僕に言わせればモナコの夜景は熱海の夜景で、ともに同じくらい素晴らしい。熱海も負けていない。ただし「昭和の新婚旅行先」との触れ込みだけでは、熱海も頭打ちになっていく。


 どんな田舎であれ、アクセスが悪かれ、海の向こうであれ、興味が湧くのなら人は苦にせず飛び越えてくる。何か楽しそうなものに集まってくる。どうキャッチし、応えるか、サッカー界の腕の見せどころだね。