BOA SORTE KAZU

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BOA SORTE KAZU

“サッカー人として”  2019年08月16日(金)掲載

“サッカー人として”
2019年08月16日(金)掲載

カズのまま死にたい

 ブームというものは消費される。飽きられる。甘いあんこがいくら好きでも、3、4個も出されればもうたくさん、という具合に。1993年に開幕したJリーグのフィーバーも、次第に飽きられ、1999年には横浜フリューゲルスの消滅に見舞われた。ずっと続くならブームでなくなるわけだ。


 熱しやすく冷めやすいのは人間のさが、万国共通だけど、英国のスポーツ関係者は「日本ほど多様なスポーツに熱狂する国はない」という。普段は目立たないマイナー競技も、五輪で勝った途端に関心の火が燃え上がる。国民性なのかな。


 ブームで火が付かなければ先へも進めないけれども、飽きさせず、新鮮さも提供しながら火を絶やさないことはより難しい。店を出店でき、いっときはやっても、5年、10年と繁盛させるのは大変。プロという仕事もそう。


 女子ゴルファーの時の人、渋野日向子さんはゴルフを知らない人にも一躍知れ渡った。ただ、本人もフィーバーのサイクルを実感しているんじゃないかな。「スマイリング・シンデレラ」のはずなのに、笑えなくならないか、心配。フィーバーに疲れて「ほっといて」という人もいるから。


 僕の場合は「ほっとかないでくれ」だけどね。騒がれてストレスに感じることはないし、ファンからの熱に応えるのも役割のうちだから。


 この夏休みは横浜FCの練習にも数多くファンがきていて、北海道からきてくれた30代女性はあまりの暑さに熱中症で倒れちゃった。看病され、病院に搬送されて無事回復したのだけど、遠のく意識のなかで「カズ……カズー!」とうなっていたらしい(持参されたユニホームにサインして後日郵送しました)。飽きるどころか、火が燃えっぱなしの方もいるんだね。


 同性にも支持される人は長続きしていく。僕が結婚した時点で興味をそがれた女性はいたかもしれないし、男性はアイドルに理想の女性を重ねる。でも矢沢永吉さんのファンは圧倒的に同性。矢沢さんが69歳になってもコンサートがあれば行き、グッズが出れば買う。疑似的な恋ではなく、その生きざまに共感して。


 僕もこれだけ同性の方に人生を重ね合わせられると、もう簡単には死ねないね。現役をやめるのは死ぬとき、かも。「カズ引退」ではなく「カズ死亡」。三浦知良は生きていても、カズは生涯を終えたと。僕としては、カズのまま死にたい。