BOA SORTE KAZU

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BOA SORTE KAZU

“サッカー人として”  2012年12月07日(金)掲載

“サッカー人として”
2012年12月07日(金)掲載

プロに「明日」はない

 一つのシーズンが終わり、新たなシーズンへ向かう。その先の5年、10年後、自分はどうなるのだろう――。僕はそんな風にあまり考えない。プロは「いま」を生きるしかないから。


 「君たちは歯医者へ行けば、並ばずに一番目で治してもらえるだろう。でも、選手を辞めれば100人の列の100番目に並ぶんだよ」。ブラジルで監督からよく聞かされた。今日は選手でも、明日はどうか分からない。自分の置かれた状況なんて一瞬で変わる。ちやほやされたって、僕も歯医者の列の最後尾へ……。


 だから、今日を頑張れ。今日を頑張らないと明日もないんだ。そう言いたいための例え話なんだね。優れたスターも油断すれば明日はなくなる。諸行無常、厳しい生存の現実をブラジルで見続けてきた。だからずっと「今日」しか見てこなかったよ。


 いまの僕の年になれば、一年一年というスパンではなく一日一日、という感じ。20歳や30歳の選手になら「これをすれば体はこう反応して、こう回復する」と言えるだろう。どこまでやって、休めばいいか。45歳の選手には誰も教示できないよ。今日これだけ練習して明日はどうなるのか。僕だって分からない。練習ですごく体が切れて「こんなに……できちゃっていいのかな?」と我ながら驚くことがある。かと思えば「ここまで悪くなるかね?」という日も。そんな僕に「分かるよ。俺も経験あるよ」と言える人はいない。


 明日が見えにくければ不安にもなる。僕だってそう。これだけストイックにやっても「俺、どうやって食っていくんだろ」と思うもの。1億円、10億円はすごいお金だけど、なくそうと思えば一瞬でなくせる。レベルの違いはあれども、何事も本質では同じじゃないだろうか。保証がない点でね。


 でも、不安や危機感と隣り合わせの人こそ、強くなれるんじゃないかな。僕にも常に危機感がある。それが「挑戦しなければ」との心を生む。挑戦には必ずリスクが伴うけれど、やらずに後悔するよりはやって後悔したい。やならきゃ――。15歳でブラジルへ飛んでいったあの時と同じ感覚。身の保証があるに越したことはないけれど、もともと保証がないのがプロ。その代わり、夢もある。


 今季は何もせずに終わってしまったというか。それでも「いま」に打ち込むことを、続けられる限り続ける。年齢を重ねてますます意欲的になっているからね。我ながら元気です。では2月にまた。