BOA SORTE KAZU

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BOA SORTE KAZU

“サッカー人として”  2012年06月08日(金)掲載

“サッカー人として”
2012年06月08日(金)掲載

細部こそ気が抜けない

 僕はみんながこだわるほど、ゴールにはこだわってこなかった気がする。代表でもたくさん取らせてもらいましたけど、それは周りが良い選手だったわけで。だからガイナーレ鳥取戦でのゴールも自分ではあんまり特別でもなかった。一番いいところにボールを置けたシュート直前のトラップも、自然に、何気なくできたというか。


 サッカーではほんとにディテールが大事で、プレーの細部の質にこそ僕はこだわりたい。何気ないワンタッチプレーやツータッチプレーといったものが、実はチームにリズムをもたらす。ものすごいフェイント、あっと驚くリフティング、スーパーボレーシュートなどがチームのリズムを変えるわけではないからね。


 女子代表の澤穂希(さわほまれ)選手(INAC神戸)はワールドカップ(W杯)決勝で真似できないような同点弾を決めた。あれは確かに感動を呼ぶスーパープレー。でもそれより、彼女が球を失ったら追っかけてスライディングをして取り返す、その姿に人々は心を動かされるんじゃないかな。実績の一番ある人が先頭に立ち、走りまくって汗をかいている。あれならチームメートはおのずと引き締まる。


 メッシらスターもスーパープレーはするんだけど、数自体は多くないはず。むしろボールを失った後、泥臭く奪い返しにいくプレーをやっている。泥臭さも大事なディテールなんだ。


 11人がうまく動けるためのシンプルなプレーが、リズムを生み、最終的にいいアシストや素晴らしいゴールへ結びつく。いつ何時でも簡単そうに、ボールを的確に止め、蹴る。「簡単なこと」をリズム良く続けることが、もしかしたら一番難しいのかもしれないよ。


 少しずつ横浜FCもそれができつつある。5連勝といいペース。ただ、それでも22チームの中ほど。一度負ければプレーオフ圏内(6位以内)さえ遠くなる。


 ここ数年はご無沙汰だった「勝たねばならない」という緊張感を味わっている。負けられないと心の底から思うとき、自然と足は伸び、体は動くものだ。緊張感から遠ざかっていると、そのつもりはないのに同じ場面で足が出なくなる。悲しいけど、それが弱い組織の現実なんだ。


 「負けられない」厳しさのなかへ、僕らのクラブはようやく入っていける。