BOA SORTE KAZU

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BOA SORTE KAZU

“サッカー人として”  2011年02月25日(金)掲載

“サッカー人として”
2011年02月25日(金)掲載

ブラジルの黒いカバン

 ブラジルのサッカーには「マーラ・プレッタ」という言い回しがあります。何のことだと思います?


 直訳すると「黒いカバン」。あれは20年以上前、僕がキンゼ・デ・ジャウーでパルメイラス戦に臨むときだった。キンゼ・デ・ジャウ-が勝てば、パルメイラスに代わってコリンチャンスが次に勝ち上がれるという状況。そのコリンチャンスの会長がすぐさま僕らのクラブにやってきた、マーラ・プレッタを携えて。「カネを出す。勝ってくれ」。


 面白いもので、あちらではこれが買収とも八百長とも見なされない。懸賞金の一種、特別スポンサーがついたといった程度の感覚。新聞も「またマーラ・プレッタが現れた」とよくあることのように報じる。負けてと頼むのは八百長でも、勝ってと頼むのはおとがめ無しのようなんだね。


 そのパルメイラス戦、我らがキンゼ・デ・ジャウーは「よーし」と気合が入ったのか、4万人であふれるアウェー戦に勝ってしまった。もちろん団体競技のサッカーで、どんな“ニンジン”をぶら下げられても、勝利を保証することなどできない。ちなみに特別勝利給も出なかったけれど。


 昔の話とはいえ、ブラジルはなにかと露骨で、残留のかかるチームのホームゲームでは自陣のゴールエリアはきれいなのに相手側には水をまいてぐちゃぐちゃにする。リードする側がスタンドへボールを蹴り出すと当分戻ってこない。審判は後半43分で試合を終えちゃう。問い詰めても「オレの時計はもう45分」。当時は審判の買収話も耳にしたし、狙われるのは審判とGKという噂もよく聞いた。GKがわざとファンブルすれば得点は入りやすいから。


 昨季のJ1、最終節で京都サンガとFC東京が対戦した。京都が勝てばFC東京と残留を争うヴィッセル神戸には大きな後押しとなるから、ブラジルでなら神戸側がマーラ・プレッタを手に京都へお願いに行っただろう。2部に落ちる経済的損失を防げるなら安いもの、というふうに。


 日本でマーラ・プレッタはあり得ないよね。関与の深いチームがお金を差し出すのだから。一方で「プロは勝利のためにお金を使うもの」という考え方もあるのだろう。勝負やプロというものをどうとらえるか。どちらも根底にあるのはそれなのかもしれないね。