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「サッカー人として」第30回 三浦知良


意義深い「ゴラッソ」

 広島戦での今季初ゴールの後の反響はすごかった。知人に会いに神戸に立ち寄って、翌日に東京に戻るまでの間にタクシーに乗るときや新幹線の切符を買うとき、あらゆる場所でみんなが「おめでとうございます」と祝福してくれる。

 ゴール自体もきれいな形で、チームメートはラテン語系の言葉で素晴らしいゴールという意味の「ゴラッソ」だと言ってくれた。僕は日本人最年長ゴールという数字的なものが重要とは思わないし、どんな形のゴールでも1点は1点。それでも、みんなが期待してくれていた40代での初得点が美しいものだったというのは悪くない気分だ。

 その3日前のナビスコカップのFC東京戦でウチらしく1―0で競り勝っていて、連勝で自信をつけたいという大事な一戦でもあった。そこで難波と僕、FW2人が1点ずつ取ったことも意味がある。これまでチームで2点以上奪った試合は一度もなくて、完封負けが多かった。それに野球でクリーンアップが打つのに似て、FWの得点はチームを勢いに乗せるからね。

 ゴールの時間も前半終了間際で、2点差になって相手がガクッときているのもわかった。ハーフタイム、「0点に抑えるぞ」「粘っこくいくぞ」と声を掛け合うみんなの顔つきが連敗中とは全然違う。話す内容は今までと変わりないけれど、表情に不安がないし背筋がぴんと伸びた感じ。チームにとって大きな勝利、大きなゴールだった。

 この2試合、今までリーグ戦に出られなかった選手たちが先発で貢献した。ナビスコカップしか出番がなかった彼らに、僕は「ナビスコも立派な公式戦だし、勝てばカネ(勝利給)だってもらえる。おまえたちは代役じゃない。プライドを持てよ」と言い続けてきた。

 彼ら自身も、連敗続きのチームを歯がゆく思っていたという。ピッチの外から見ていたからこそ気付いたこともあるだろうし、自分が試合に出たときにやるべきことも理解していた。

 もちろん外された選手はコンチクショウと思って、ポジションを取り返そうと頑張るはず。勝っていればそんな競争心がどんどんあおられて、良い方向に転がっていく。やっぱり勝利は何回味わっても慣れることがない。本当にいいものだ。(元日本代表、横浜FC)

(日本経済新聞、2007年5月18日掲載)


※このテキストを三浦知良および日本経済新聞社に無断で転載することを禁止いたします。

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