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「サッカー人として」第29回 三浦知良


アジアをもっと知ろう

 先週、横浜FCに若い韓国人選手が練習生として参加していた。驚いたのは、彼が「カズダンス」を知っていたこと。僕が日本代表で決めたゴールや得点後のパフォーマンスをよく覚えているという。彼の年齢からすると、当時は小学校の低学年か幼稚園児くらいだったはず。それでも僕の存在は韓国でも有名だし、リスペクト(尊敬)されていると話してくれた。

 今季開幕前には韓国Kリーグのクラブとの練習試合があって、僕が相手の反則で倒れた場面があった。するとその選手がベンチにいるコーチに促されて僕のそばへ来て、ペコリと丁寧に頭を下げて謝った。

 そのコーチは元韓国代表選手で、僕と何度も対戦した人。そんなに悪質な反則でもなかったし普通は試合中に謝罪なんてしないものだけれど、彼も若い選手も僕のことをよく知っていて敬意を表してくれた。

 韓国の人々に注目されるのはうれしいことだし、自分の活力になる。ただ気になるのは、アジアの人々が日本のサッカーに視線を向けてくれているのに、僕ら日本人は灯台下暗しというか、欧州の方にばかり目を向けてしまいがちなこと。サッカーに限らず、隣国のことを知らなすぎるような気がする。

 日本に関心が集まるのはそれだけJリーグの環境、盛り上がりなどに素晴らしい面があるから。だからこそ、もっと日本から積極的にアジアの国々と交流を深めていかなければ。

 選手がもっと自由に行き来できるように特別な外国人枠を設けるとか、韓国や中国、タイくらいまで含めてリーグ戦をやるとか。例えば毎週水曜日はアジア勢との試合を組んで、新聞の紙面もアジアの話題で埋まる。15年、20年先にそうなっていれば面白い。

 スポーツに国境はないというように、在日韓国人の李忠成選手が日本に帰化して五輪を目指し日本のために戦っている。韓国・中国と日本の間には歴史的な問題など複雑な事情もあるけれど、それを飛び越えて尊敬し合えるのがスポーツの素晴らしさでもある。

 僕らは韓国や中国についてまだまだ知らないことが多い。サッカーを通じて互いをより身近に感じられたらいいし、そんな力がサッカーにはあると思うんだ。(元日本代表、横浜FC)

(日本経済新聞、2007年5月4日掲載)


※このテキストを三浦知良および日本経済新聞社に無断で転載することを禁止いたします。

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