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「サッカー人として」第16回 三浦知良


厳しく謙虚なブラジル

 今月上旬、リーグ戦が3週間近く空いたのを利用してブラジルへ行ってきた。永住権の更新のためで、3泊7日の強行軍。短い期間だったけれど、日本で僕も指導を受けたレオン監督が指揮しているコリンチャンスで練習させてもらったり、サントスの試合を見たりして刺激を受けてきた。

 あらためて感じたのは、選手の目つきの鋭さ。僕の古巣でもあるキンゼ・デ・ジャウーという田舎のクラブで高校生年代のチームの練習を見学したとき、彼らは虎のような目をしていた。

 プロになれるかどうかのふるいにかけられる一歩手前。これで食べていくんだ、はい上がるんだというハングリーさがみなぎっていた。向こうでは貧しくて教育を受けられない子供もいる。そんな中ではい上がるためには、やっぱりサッカーしかない。彼らを見ていて、自分が17歳のころを思い出した。僕もあんな目をしていたんだろうな。

 ブラジルではテレビで一日中サッカー番組をやっている。一つ一つのプレーをスローで再生してこれは本当にオフサイドか、これは主審が間違っているんじゃないかと検証している。

 選手に対しても、例えばGKのミスでゴールが生まれたらその映像を延々と流して、そのせいで負けたとハッキリ言う。言われた選手はたまらないし、日本では考えられないけれどブラジルでは当たり前。その重圧に耐えられない選手は落ちていく。そんな厳しい環境が選手を鍛え、審判を鍛え、サッカーファンの試合を見る目を養っていく。

 ブラジルの強さを支えているのはそんな厳しさに加えて謙虚さだろう。もちろん世界一サッカーがうまい国というのは誰もが認めるところだし、プライドも持っている。それでも練習方法や戦術、クラブハウスの設備に至るまで、欧州の良いところを吸収しようとしている。今年のワールドカップでの反省もあるんだろうけれど、より速くオートマチックにという世界の潮流に取り組んでいる。

 あのブラジルですら、そうやってサッカーに取り組んでいるんだから、日本はよっぽど頑張らなくちゃ近づけない。選手も指導者も運営する人も、それぞれの立場でしっかりとしたビジョンを持ってハングリーに戦わないとね。(元日本代表、横浜FC)

(日本経済新聞、2006年10月20日掲載)


※このテキストを三浦知良および日本経済新聞社に無断で転載することを禁止いたします。

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