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「サッカー人として」第10回 三浦知良


ジーコ戦犯論に待った

 世間は日本代表のオシム新監督の話題で持ちきりだね。僕はオシム監督とはあまり話をしたことがなくて、映画「ゴッドファーザー」に出てくる晩年のヴィト・コルレオーネに似ているな、くらいのイメージ。

 気になるのは、全面的にオシムが良くてジーコが悪いという風潮だ。今の日本では理論的な監督の方がわかりやすくていいという評価で、確かにそれもわかる。でもちょっと待ってほしい。ジーコのやり方で成功した部分もあったはずだし、それを面白いと言って賛同した人もいたはずだ。

 それに、結果を出すことが優れた監督の条件なら、ジーコはアジアカップで優勝したしワールドカップ予選も突破した。本大会でもプラン通りにいかなかったのはオーストラリア戦の最後の3失点のところだけ。

 それなのに1次リーグで敗退した途端に、手のひらを返すように戦犯扱い。プロの世界だから仕方がないけれど、オシムの言うように過剰な期待をかけていた部分もあっただろう。この4年間を否定すべきではないし、絶対に自分の意志を曲げなかったジーコの強い信念には賛辞を贈りたい。

 これからの日本代表については本当に楽しみ。ヒデ(中田英)が引退した今、次のスーパースターの登場も求められている。チームとしてすぐに結果が出るかどうかわからないけれど、Jリーグの千葉で多くの選手を育てた指揮官だから、きっと面白い仕事をしてくれるはず。僕もいいものを吸収していきたい。

 代表監督が代わったからアピールしないとなんて、選手はいろいろ考えてしまうものだけれど、先のことをあれこれ考えるのは過去を振り返るのと同じで、エネルギーの無駄遣い。ひたすら目の前の試合に集中するように意識的に自分をコントロールしている。

 僕自身も日本代表でプレーしたいという夢は持ち続けている。だけど今は横浜FCで1部(J1)に上がるという目標だけを見据えている。J1に上がれなかったらどうしよう、なんてことも考えない。それもエネルギーの無駄だし、失敗を恐れて臆病にもなってしまう。余計なことを考えず、練習や体のケアを怠らないこと。それが一番いい結果につながるはずだから。(元日本代表、横浜FC)

(日本経済新聞、2006年7月28日掲載)


※このテキストを三浦知良および日本経済新聞社に無断で転載することを禁止いたします。

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