−松井大輔−素質は十分 本物に触れ 大人になれ
京都の松井大輔選手がフランス2部リーグのルマンに移籍したね。僕が京都にいたとき、大輔は高卒の新人として入団してきた。同世代では別格だったね。人懐っこくて、ある意味物おじしないというか生意気だったけど、かわいいやつだった。お互い寮で生活していたこともあって、よく食事をした。もともと海外志向が強かったんだ。
京都は今、J1昇格に向けて大事な時期だけど、移籍というものは流動的だし、自分でいいと思ったチームに行くのは当たり前。日本は情に流されるところがあるけど、自分を高められる場所に進むのがプロフェッショナル。じゃあ残ったからといって、先が安泰とはかぎらない。
僕も福岡からオファーが来たときに京都に「残ってくれ」と言われて、残ったものの半年後にはクビになったからね。23歳の大輔にとって今がベストの決断だった。
人生を楽しめばいい。フランスの食べ物だって、おいしければ食べたらいいし、まずければ食べなきゃいい。なじむ意味で向こうの文化を積極的に吸収するのは大事だけど、無理をする必要はない。僕がブラジルにいたころ、監督たちにすき焼きをごちそうしたら「よくこんなのが食えるな」と言われた。イエス・ノーをはっきりさせるのは海外での心得だよね。「まあまあ」ではだめ。
サッカー文化の深い国に行くわけだから、学ぶものは多い。彼の魅力は華麗な技だけど、まだ余分なものがあるし、余分なものがあっていい年齢。ただ、自分の世界で終わってしまうことがある。その技をどれだけシンプルに生かし「勝利に導けるか」が大事になる。
サッカー選手には25歳までにもう一度伸びる時期がある。大輔は練習態度もまじめだし、日本代表の中心選手になれる素質がある。欧州のサッカーに触れ、大人のサッカーで楽しませてほしい。オフの1月あたりに僕も見に行きたい。(隔週金曜日に掲載。次は17日)
(神戸新聞、2004年9月3日掲載)
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