−天皇杯−もう1度味わいたい決勝舞台
天皇杯は今年で83回を数える、日本で一番歴史と伝統のある大会。高校生や大学生が、社会人やJリーグのクラブと戦ったりと、サッカーならではのアマチュアとプロの交流がある。
一方でJリーグが発足してからプロ選手には非常に難しい大会になった。クラブとの契約が切れるのが翌年1月で、解雇される選手は11月末までに通知される。契約を更新する選手も、天皇杯期間の12月中に契約更改を行わなければならない。僕はV川崎と京都時代に来季の契約がないままこの大会を迎えたことがある。
特に1998年度のV川崎は、出場する選手の半数以上が来季の契約がない上、監督も辞めるという状況で「このメンバーでできる最後の大会」ということで奮起した。さらに、横浜フリューゲルスはその年での解散が決まっている中で優勝。そういう困難な状態だと本当に波乱が起こる。
僕は過去3度、元日の決勝に出た。1年の締めくくりであると同時に、1年の出発でもある舞台に立てるというのは、Jリーグのチャンピオンシップなどとは別の独特な喜びがある。
年末に向けて街が騒がしくなる中、僕らは変わらないペースで試合をしていく。クリスマスも大みそかも関係ない。何とも言えない充実感があったのを覚えている。
それを神戸の選手たちにも教えてあげたい。12月31日、年の最後、そして新年を迎えるとき、前泊するホテルの部屋にいるっていう心境をね。年越しそばを食べなきゃとか、紅白を見なきゃとかはない。いつもの試合前と同じ通りにすることが「あぁ、なんかサッカー選手だな」って心底、思える瞬間だった。
1月1日、がらんとした東京の街を僕らは「仕事」に向かう。東京を征服したような気持ちになるんだ。僕は本気で天皇杯を取りにいきたい。天皇杯ほど決勝以外に記憶に残らない大会はないんじゃないかな。(隔週金曜日に掲載、次は26日)
(神戸新聞、2003年12月12日掲載)
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