LOCKER ROOM


「カズ魂」最終回


過去を大切に、新しいものに挑戦

 神戸の街はきれいに飾り付けられていて、クリスマス気分を盛り上げている。でも僕たちサッカー選手の年末は、天皇杯(全日本選手権)に集中して、クリスマスにも気が付かないうちにお正月の決勝を迎えるのが一番いい。負けて試合の予定がなくなってしまうと、白けてしまうのが本音なんだ。

 今は、来年も神戸でプレーすることを第一に考えてクラブ側と話し合っているところ。まずは神戸をどう変えていけばいいのか、について意見を出し合っている。僕が求めているのは、クラブの雰囲気とか選手の気持ちの部分。そこから勝てるチームに変えていきたい。お金はかからないし、やろうと思えばすぐにできるはずのことばかり。互いに納得するまでじっくり話し合うつもりだ。

 いつまでこうやってプロサッカー選手を続けていくのか。まだ僕自身にもわからない。ずっと「選手」としてサッカーを楽しむつもりだけど、「プロ」でいられなくなる時は必ず来る。技術や体力の問題じゃなくて、精神力が落ちた時かな。だけど頭でそう考えても、「いつ死ぬんだろう」と心配するようなもので、どんな状況だろうかなんて全然想像がつかないんだ。

 最近、築いてきた過去を大切にしながら、新しいものに挑戦したいと考えるようになった。

 自分がやってきたことに疑いがよぎる瞬間もあった。イタリアで1年プレーしたことや、ワールドカップを目指したことが、ちっぽけなことのように思えてしまった。日本から海外に出ていく選手がどんどん出てきて、日本代表がワールドカップで勝てるチームになって、自分の過去がかすれたような感じがした。

 でも本当は、先輩たちや僕らの時代の積み重ねがあったから今がある。だからあの時代の苦労の価値はますます上がっているはずなんだ。そこに気付いたら、新しい何かを作り出したい、という気持ちが改めて強くわいてきた。

 昨年4月にこの連載を始めてから、今まで僕をよく知らなかったような年上の人たちからも、声をかけてもらえるようになった。そういう人たちに、僕の経験、生き方、サッカーってどんなものなのかを伝えたくて、言葉を探しながら連載を続けてきた。

 若いころは、自分の発した言葉がメディアによってゆがめられることに敏感になったこともある。だけどそれは、メディアも人間で構成されている以上、ある程度は仕方がない。割り切って、自分の役割は語り続けることだという意識を持つようになった。

 自分の意見をしっかり持って、自分の言葉で伝えなければいけない。なかなかうまくいかなかったけど、伝えたい言葉がだんだん見つかり始めている。「カズ魂」には、僕のこだわりを詰め込んできたつもり。最後の一言は僕の好きなポルトガル語で。みなさんに「ボア・ソルチ!(幸運を)」。
<おわり>


(朝日新聞、2002年12月24日掲載)


※このテキストを三浦知良および朝日新聞社に無断で転載することを禁止いたします。

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