LOCKER ROOM


「カズ魂」第30回


16年間 常に失職の危機感

 試合に出られない状況が続いている。けがのせいでもあるが、こんなに遠ざかるのは初めてだ。サポーターから「見に行ったのに残念です」と声をかけられることも多い。心配してくれる人もいるけど、僕は何も変わっていない。一日も早くピッチの上で元気な姿を見てもらえるように頑張っている。

 試合に出ないで練習ばかりだと、コンディションの維持は確かに難しい。寂しさや悔しさはもちろん感じるし、控えが続くと、どうしてもその状態に慣れてしまう。そうなってしまうのは危険なことだ。でも、そこで前向きに考えることができるかどうか。自分を奮い立たすことができれば、余裕も生まれる。自分の気持ちさえしっかり持っておけば大丈夫だと思っている。外されたからといっても、だれのせいでもない。何よりもまず、自分を信じることが大事だと思う。

 10年以上前、ヴェルディ(川崎)に在籍していた時、先発落ちを告げられて「ベンチなら遠征に帯同しない」と拒否したことがあった。思えば「若い主張」だったかもしれない。でも今は「経験」という財産がある。そして35歳でもさらに成長し続けている自分がいる。

 ブラジルでプロになって以来16年間、失職する危機感とは常に背中合わせだ。試合に出られなくて、改めて不安に思うことはない。最近強く思うのは、サッカーは楽しんでやるのが大事ということ。危機感をプラスにして、毎日楽しくサッカーをしたいね。

(朝日新聞、2002年10月29日掲載)


※このテキストを三浦知良および朝日新聞社に無断で転載することを禁止いたします。

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