LOCKER ROOM


「カズ魂」第27回


新しい自分探し 始まった

 無心ってどういうことだろう。そう考えて8月に座禅をしてみた。サッカーのためというより、一回り大きくなりたくて。

 45分間、あぐらを組んだ。初めは足が痛くて、これを乗り越えたら人間の幅が広がるんだろうか、と思いながらこらえた。足が痛くなくなると顔がかゆい。おさまるとまた足が痛い。聞いた話では、20分ぐらいすると体が宙に浮いたような感じがしてくるはずだって。でも最後までそんな心境にはなれなかった。

 プロ選手として称賛されたり批判されたり、一つの勝敗、一つのプレーでがらりと変わる。そういう重圧や要求と戦っていながら、目標に向かって必死な時の方が、かえって無心になれる。

 これまでずっとW杯を目標にしてきた。自分が出られないW杯を見ていた時は、落ち込みはしなかったが寂しかった。

 これからも日本代表復帰が目標だし、W杯やアジア杯にも出たい。けれど35歳になった。「4年後のW杯ドイツ大会を目指す」とは言えない年齢だ。アスリートに与えられた時間は限られているからね。

 今の僕に考えられるのは、目の前の1週間。次の1試合に集中している。最近は「サッカーを好きでいられる」ことが大切に思えてきた。サッカーを複雑に考えなくなってきた。

 これからは、新しい「カズ」を探していくよ。

「カズ魂」を再開し、隔週で掲載します。


(朝日新聞、2002年9月10日掲載)


※このテキストを三浦知良および朝日新聞社に無断で転載することを禁止いたします。

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