BOA SORTE KAZU

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BOA SORTE KAZU

“サッカー人として”  2009年06月26日(金)掲載

“サッカー人として”
2009年06月26日(金)掲載

基本押さえて楽しむ

 何事もこだわり始めるときりがない。僕の場合はファッションがそうで、今はスーツもシャツもベルトも靴も、決まった職人にオーダーで作ってもらっている。靴は出来上がるまでに約一年。スーツも仮縫いを4回くらいして、パンツの丈を5ミリ単位で職人と延々議論しながら決めていく。


 僕はウエストが約76センチと細くて、逆にヒップには筋肉がついているから98センチくらいある。イタリアの職人が「こんなサイズの男がいるわけない」と言ったくらいで、既製服だと体に合わせて直すのも大変。オーダーなら体にピタッと合ったきれいなラインに仕上がって、長く着続けられる。


 昔はアルマーニなんかをよく着ていたけれど、流行のものは2年も着ると古くなったような気がしてしまう。今はクラシックなスタイル。ショパンの曲と一緒で、クラシックなものは流行(はや)り廃りがなく、受け継がれていくんだ。


 スーツの選び方一つでも考え方はいろいろ。スーツを引き立たせるには、いいシャツといいベルトが必要。そこがダメだと、どんな高価なスーツも意味がないという人もいる。スーツに靴を合わせるんじゃなくて、靴に合ったスーツを選ぶという考え方もある。


 イタリア・ファッション界の重鎮と呼ばれる人たちにアドバイスを求めると、決まって「君が気持ちよく、楽しく着ればそれいいんだよ」という答えが返ってくる。これはサッカーでも同じで、達人の域に達した名選手は戦術がどうとかよりも「自分が楽しむことが大事」と言うものだ。


 どんなに突き詰めても極められることではない。いい線まで来たと思っても、後で考えると全然わかっていないもの。サッカーも毎年新しい発見がある。38歳のころはだいぶ理解したつもりだったけれど、実は全然サッカーをわかっていなかった。日本代表でバリバリやっていた20代のころなんて、ちゃんとできていたのか心配になるくらいだ。


 ファッションもサッカーも、何が正解で何が間違いというものじゃない。ただ、だからといって何でもOKというわけじゃない。基本ができていないと何をしてもダメ。基本をしっかり押さえたうえで、自分の色を出して楽しむ。それが一番難しいことなんだ。