BOA SORTE KAZU

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BOA SORTE KAZU

“サッカー人として”  2023年03月31日(金)掲載

“サッカー人として”
2023年03月31日(金)掲載

世界は小さく、近い

 いやはや、「ムンド・ピケノ」。世界は小さい、と感じるきょうこのごろです。


 「カズが40年前にブラジルに来たとき、ジュベントスで一緒にプレーしていたという男性が来訪しています」。 先日、人づてに呼び出された。どうにも記憶はおぼろげだったのだけれど、会ってみて懐かしい寮での集合写真を見せられれば、紛れもなく当時の先輩。


 彼のSNS(交流サイト)を通じ、他の仲間ともテレビ電話でつながって昔話に花が咲く。「ポルトガルにいるんだよ、いま」「知ってるさ、ニュースでみてるよ」。40年の月日を飛び越えちゃったみたいだった。


 僕がポルトガルに移籍してきたからこそ、現在はポルトに住む先輩と40年越しでリアルに再会できる接点ができた。こんな巡り合わせもサッカーを続けていてこそというか。


 ちなみにオリベイレンセにはもう一人のカズがいる。日系ブラジル人の彼は13歳でコリチーバの育成チームに入った。老監督に呼ばれて「クリスティアン・ケンジです」と名乗ると、それじゃダメだと言われたという。「何年も前、技術がありドリブルもうまい日本人がここにいたもんだ。だから君も今日からカズだ」


 以来、彼はブラジルの年代別代表でもシャツネームをカズで通し、オリベイレンセでは2月末に初ゴールを飾った。「カズの目の前で、カズダンスをカズが踊った」。作り話みたいだけど、本当に起こったこと。「本物と、まさかブラジルと日本以外の場所で一緒になれるなんて」と23歳になった彼はいう。「元祖」の方も、遠かったはずのものをつなげていくサッカーの不思議さを思うばかりです。


 彼は日本に住んだことはなく、容姿は日本人でも日本語は話せない。国籍などのハードルは高く、日本人としてプレーしたくても簡単ではないみたいだ。比べるものではないけれど、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)という場で、日系人のヌートバー選手が日本チームの一員として受け入れられたのは素晴らしいことだと思う。


 ペレ以前とペレ以後で、サッカーのワールドカップ(W杯)は別のものになったといわれる。国を問わず憧れの対象だったペレは、出場する大会の価値観も変えた。WBCも「大谷翔平選手の前と後で変わった」と語られていくのかもね。君も今日からはショウヘイを名乗るんだ――。そう促される野球少年が世界中で生まれると想像すると、楽しい。日本をより近しい存在だと感じてくれる人々が、世界で増えるわけだから。