BOA SORTE KAZU

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BOA SORTE KAZU

“サッカー人として”  2023年03月03日(金)掲載

“サッカー人として”
2023年03月03日(金)掲載

前向きなエネルギー ポルトガルでの気づき

 オリベイレンセでは試合前日ミーティングが先発予定の11人だけで行われる。対象外の僕らは外で待ちぼうけ。会議ひとつも色々なやり方があるなと、新しい場所に来てみて気づく。


 監督が答えをすべては出さないのも、日本とはちょっと違う。求められるものは何か、何が間違っているか、いないか。日本だと監督が事細かに答えを持っているとされ、選手もそこに期待する。こちらでは監督からの導きはあるけど、判断の余白が残されているというか。


 ピッチ上でのろのろとボールを回すことはサポーターもよしとしない。前が空いたなら挑む、ゴールへ突き進む。そうした姿勢を僕ら選手は託されている気がする。


 人々はみな、温かい。そしておおらか。ある試合の終了直後、控室で真っ先にビールで祝杯を挙げる選手がいた。「もう飲んでんのか」とあきれたら、「カズもどうだ」と勧められた。


 もちろん、本業には真剣そのものだ。先日はGKと主将が主張を譲らず、取っ組み合いになりかけた。監督が警告とばかりに笛を鳴らし、練習はそこでお開き。やる気のなさそうな人間は見当たらないし、どう見ても足が腫れているのに練習を休まない選手もいる。むしろ、日本人よりも真面目で一生懸命かも。


 2日続けてのオフにジムへ行ったら、ブラジル人の同僚も筋トレに精を出していた。彼らは練習前の準備も怠らない。休みをもらったら永遠に休み、9時から練習なら9時ジャストに来る。僕が15歳のころはそれが「ブラジル選手」だったのに。一方でフランス人の同僚は、イメージに反して控えめでおとなしい。何かと先入観は覆され、目を見開かされ、認識は書き換えられていく。


 夢を追うだけではプロはやっていけないし、海外に挑むことだけがプロの道でもない。ただ、外に出たら出たで、何かしら得るものも発見も大きい。思わぬ人とのつながりが生まれるかもしれないし、そこが気に入って住み着くかもしれない。いつだって、人生の可能性を広げるのは自分次第なのだから。


 小さな発見といえば、僕が一緒にプレーしてきた選手の名を挙げるとみんなが目を丸くする。ドゥンガらと同世代で、まだ選手をやっているのかと。えたいの知れないものに驚くような彼らの顔を見ると、自分って何なのだろうと、こっちも楽しくなる。