BOA SORTE KAZU

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BOA SORTE KAZU

“サッカー人として”  2007年08月10日(金)掲載

“サッカー人として”
2007年08月10日(金)掲載

厳しい夏合宿の思い出

 8月といえば夏休み。子供にとっては毎日遊び回れる楽しい時期で、僕の場合はサッカーばかりやっていた。自分の叔父さんが監督をしていた城内(じょうない)FCというクラブで、長野や神戸の大会に遠征して回っていたから、静岡の自宅には合計しても一週間もいない。クラブに入っていた小学1年から中学3年までの9年間、ずっとそういう夏休みを過ごしていた。


 そんな中で一番思い出に残っているのは、毎年恒例の伊豆・下田での夏合宿だ。その厳しさが半端じゃない。炎天下で一日ずっと練習という日もあるし、宿舎とグラウンドの間の坂道だらけの約5キロを毎日走って往復。連日の猛練習だった。


 宿舎への帰り道で、一つ年上の先輩がバタッと倒れてしまったこともある。救急車で病院に運ばれて、医者から「危険な状態だから、ご両親を呼んでください」と言われたそうだ。幸い大事には至らなかったけれど、それほど激しい練習を続けていた。僕がチームに入る前には、合同で合宿に参加した他チームのメンバーが耐えきれずに2日目の朝に脱走してしまったこともあるらしい。


 30年くらい前だから許されることで、今の時代に同じ指導をしたらきっと問題になってしまうだろう。それでも当時、合宿に引率で来ていた保護者からも一切、苦情は出なかった。僕自身つらかったけれど、そんなスパルタ教育のおかげで鍛えられたとも思う。


 夏合宿の厳しさはサッカーの練習のときだけじゃなかった。食事でも好き嫌いなんて許されない。どんなに苦手なものが出ても、全員が全部食べ終わるまでは1時間でも2時間でも待っていないといけなかった。


 みんなで寝泊まりして、サッカーの練習も小学生と中学生が一緒にやる。年の離れたチームメートと過ごすことで、人間関係の面などで学ぶことも多かっただろう。今の子供たちはそういう経験をする機会が少ないようだけれど。


 僕は自分の息子2人に、あまり厳しいことは言わない。「ありがとう」と「ごめんなさい」「おはようございます」などのあいさつを誰に対してもキチンと言いなさい、というくらい。だから時々、あの夏合宿で鍛えてもらった方がいいかなと思うこともあるんだ。