BOA SORTE KAZU

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BOA SORTE KAZU

“サッカー人として”  2022年06月17日(金)掲載

“サッカー人として”
2022年06月17日(金)掲載

ブラジルは向かっていくのがお好き

 日本代表との一戦でご覧の通り、何はともあれ、ブラジル代表は止める・蹴るという当たり前の技術がとんでもなく優れている。そして彼らは攻撃というものをすごく好む。やる選手も、見る側も、そうでなければ認めない。あの試合の日本のように守備に回らされ90分間を過ごすと、あちらのメディアは「臆病な試合だ」と片付けてしまう。


 でも僕は日本がブラジルに対して「臆病で、得点を取りにいかなかった」とは思わない。いけなかった、が正確だね。誰もが攻めたかったに決まっている。それでも攻められない、力関係がそうさせてくれない。自分もブラジルと一戦交えた身だからよく分かる。

 
 とにかくブラジルのサッカーはドリブルもパスも、あらゆるプレーがゴールへ向かう。何よりも評価されるのは個別の成功・失敗より、ゴールへ向かったかどうか。三笘薫選手がミリタンに1対1で勝負しにいったシーンには、しびれた。


 三笘選手のしかけにミリタンは一瞬、振られながらも、ボールが離れた瞬間に体を挟み込む。抜かせない強さ、そこを抜きにかかる果敢さ。あの狭い空間を縦に抜けるのは勇気が必要で、パスで逃げていたらあの醍醐味も生まれなかった。


 僕もブラジルでデビューした当時、とにかくドリブルで勝負を挑んだ。半分くらいは倒され、ボールを取られたかな。それでも地元メディアは高く評価してくれた。ゴールのみが成功という捉え方をするなら、サッカーはほぼ、失敗のスポーツ。ブラジルの関係者は失敗そのものより、どこでどう失敗に至るかをすごくよく見ている。


 ゴールキックとなって終わった三笘選手のあの勝負は、失敗とは呼べない。あのエリアではある意味、10回挑んで10回抜けなくても、しかけて構わない。ある種の大成功であって、表面だけをみて「失敗」と見なすのなら日本のサッカーは伸びなくなってしまうよ。


 あの日のネイマールだってプレーの半分は「失敗」していたんじゃないかな。いちかばちかで狙って通らなかったパス、引っかかったドリブルもあった。けれどもブラジルの人々は彼が具現しているものをたたえ、めでる。


 三笘選手がブラジル側で出ていたら、軽く2点くらい取ったんじゃない? 守る長友佑都選手がもっと大忙しになったかな。そんな楽しい想像を抜きにしても、日本がワールドカップ(W杯)への手応えをつかめた一戦だったと思うね。