BOA SORTE KAZU

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BOA SORTE KAZU

“サッカー人として”  2022年04月08日(金)掲載

“サッカー人として”
2022年04月08日(金)掲載

「サプライズ」はもう驚きじゃない

 ポルトガルとセルビア、ワールドカップ(W杯)で対戦するとしたらどちらがいいだろう。ポルトガルの方が大変そう? でも、セルビアは欧州予選でポルトガルをアウェーで下している。つまりは、どこが相手でも楽な試合にはならないんだ。


 サッカーで「実力下位」とされるチームと戦うのは端から見る以上にやりづらいもの。やる気満々で迫られて、困らされ、負けた試合が僕も一度ならずある。


 昔、フランス人のトルシエ元日本代表監督がこんな例え話をした。「夜中に信号機が壊れて赤のまま。日本人は、壊れているのを知っていても横断歩道を渡らないだろう。我々は、壊れた信号が赤のままでも車の往来がないなら、渡ってしまうだろう」


 日本選手は規律を守る。監督に言われたことをまず心がける。向こうの選手は自分の判断にプライオリティーを置く。攻撃の崩しや打開はアイデアや判断が源でもあるから、「みんなでやる」の意識一辺倒では壁にぶつかるというわけだ。


 ただ、ブラジルやイタリアなどでは個の強さが悪い方に出たときの崩壊ぶりもすごい。2010年W杯準々決勝のオランダ戦でブラジルは最高の前半から一転して逆転されるのだけど、うまくいかないからと味方同士でもめて、言い争い、転げるように自滅していった。


 サッカーでは相手を困らせる方策があり、そこに勝機を見いだせる。日本の良さを出し、ドイツやスペインが嫌がることをやって、大いに困らせてほしい。勝ち点ゲットは空想の話じゃない。


 日本が今回のE組を突破したらサプライズと見なされるだろう。でも僕には驚きはない。ランキング96位のベトナムも、同23位の日本をホームの埼玉で困らせ、勝ち点をつかめる。起こらなさそうなストーリーも起こせるのだと、僕らは身をもって教わったんじゃないかな。「韓国、ドイツを破る」という筋書きは既に前回のW杯で現実になった。


 代表でともに戦い、「ドーハの悲劇」でW杯に見放された戦友たちが、監督やスタッフとしてW杯を勝ち取り、同じカタールへ乗り込む。29年前に打ち切られた物語を、取り返してきてほしい。予選では重圧と苦しみの方が大きかったはず。本番は楽しめるほど簡単ではないとしても、思い切り楽しんでこそのW杯だと思っている。