BOA SORTE KAZU

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BOA SORTE KAZU

“サッカー人として”  2021年08月27日(金)掲載

“サッカー人として”
2021年08月27日(金)掲載

パラスポーツが教えてくれる

 1月2日恒例の初蹴りに障がい者サッカーの方がきてくれたことがある。動きもシュートもすごくて、どこかが不自由であることを忘れてしまうほどだった。


 サッカーでは身長2メートルに近い人がいる一方で、そうでない人にも活躍の道がある。あのイニエスタだって背格好は特段、目を引かない。ジーパンにTシャツ姿だったら「普通の人」に紛れてしまうかも。それでもスーパープレーができる。


 「多様性を認め、誰もが個性や能力を発揮して活躍できる場を」というパラリンピックのテーマはサッカーにも通じるものだよね。個性があり、それが束ねられて豊かなアンサンブルになる。均質な11人より、多様な個性がバランス良く交じる11人の方がチームとして強いんじゃないのかな。


 いろんな人がいるのはピッチ上でも同じだよ。僕が19歳のころ、先輩にドゥンガがいた。相部屋でプロの心得を温かく教えてくれたと思ったら、ピッチでは一変して「この日本人、もう帰っちまえ!」とどなる。こんな人とやっていけるのかなと、思いましたよ。


 でも、そう思うだけで終わるのではダメなんだよね。言い返せるくらいでなければ成功もしないと感じた僕は、自分も意見を持ち、発するようになった。意見には責任が伴い、行動を求められることも知った。ある個性に触れたことから、「物言う選手」という自分の個性も育まれていったと思う。


 J1の降格圏にいる横浜FCにはこの夏、外国人選手が次々と加わった。前からいる選手は自分の立場が脅かされるわけで、心中穏やかじゃない。でも今は、新しくできた競争状態も含めて様々なことに打ち勝っていこうぜと、みんなの意識が1つになっている。新しい選手は変化をもたらす。既にいた選手も「やらなければ」と変化していく。交じり合うことの前向きな効果が生まれつつあるんだ。


 ブラインドサッカーはボールの中の鈴の音と「ガイド」の声をもとに動くという。普通のサッカーより数段も深いコミュニケーションがなされているはずだ。音や気配をキャッチする鋭敏なセンサーで、僕らが感じ取れないものを彼らは感じ取っている。学ぶべきことがそこにはあるんじゃないかな。


 何かが欠けたとしても、伸ばせる何かがある。欠点と思えそうなもののそばに長所や、可能性も隠れている。そんな発見やヒントを、パラスポーツが教えてくれる。