BOA SORTE KAZU

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BOA SORTE KAZU

“サッカー人として”  2020年08月14日(金)掲載

“サッカー人として”
2020年08月14日(金)掲載

賢きオールスターズ

 YBCルヴァン杯で先発して、ゴールと同じくらいの反響をいただくのは面はゆくもある。たいしたこともしていないのに、と。


 ニュースで一報に触れた方々は、53歳という年齢のインパクトから、信じられなくなるんだろう。でも僕と日々練習をしているチームメートは、僕が何を、どのくらいやれるか分かっている。同じ時間を過ごしているわけだから。彼らには「カズが出場」は別段、ニュースでもないんだよね。感覚がまひしているといえば、まひしているかもしれないんだけど。


 8月5日のサガン鳥栖戦は伊野波雅彦選手が後方からうまく試合をコントロールしてくれた。攻められても、「ここはやられちゃいけない」という部分は必ず芽を摘んでくれる。FWは安心して前線でプレーしていられた。


 速い選手、走れる若手、うまい人ならたくさんいる。でも、速さ・うまさだけで勝負は決しない。「ドリブルがうまい」だけでなく、どこでドリブルすれば効果的か。パスを操れるとして、どこへ出せば相手が嫌がるか。そこまで踏まえてプレーできるのが、賢さ。


 うちの俊輔(中村選手)やレアンドロ・ドミンゲスがそう。わざとゆっくりプレーしたり、はたまた、急にテンポを上げてみたり。ときにはフルパワーでなく、あえて緩めもする。何をすれば相手の裏をかけて、違いを生み出せるのかを心得ている。場数を踏んでいるから引き出しが多く、考えながら動ける。


 ドリブルを試みるのか、パスを選択するのか。ボールをつなぐ戦術を前提に戦っていたとしても、危ういと判断した状況なら、つながずに蹴り出せばいい。知能が高いことが賢さじゃない。「言われたらその通りにやれること」でもないよ。自分で考えられることだ。ピッチの中は、誰でもなく、自分の賢さに委ねられた世界なんだ。


 そんな俊輔や伊野波、大輔(松井選手)らもいる横浜FCは、よそへ練習試合に行くと熱い視線を注がれる。普通なら先発隊で戦い終えた相手側の選手はさっさと帰ってしまうけど、後発隊で僕らが勢ぞろいで登場するから、みんな残って観戦していく。「横浜FCオールスターズ」と呼ばれているらしい。こうなると、さらにメンバーを充実させたいね。


 まだまだ自分に、物足りない。「次の試合だ、また次だ」と常に思っている。誰に指図されたわけでもなく。そんなオールスターズ、頑張ります。