BOA SORTE KAZU

  • Home
  • Message
  • Profile
  • Status
  • Column
Menu

BOA SORTE KAZU

“サッカー人として”  2018年12月07日(金)掲載

“サッカー人として”
2018年12月07日(金)掲載

痛みがあるから強くなれる

 J1入れ替え戦の迫った1週間を、僕らはオフで持て余している。東京ヴェルディとの昇格プレーオフは終了直前のCKで相手GKのヘディングシュートからゴールされ、J2で3位と上位だった横浜FCの夢は断たれた。


 もう1週間、もう1試合、戦うはずだった。今ごろはジュビロ磐田戦へ神経を研ぎ澄まして……。やり切りたかった。行くはずの場所へ行きたかった。たった1週間、1試合のはずなのに、年間42試合分をも喪失したような重みを抱えながら僕らの1年が終わる。クラブの誰もが、モヤモヤと晴れない何かを引きずったままに。


 上がってきたGKと競ったのは21歳の若手だった。CKでGKまで加勢する設定で練習などしていない。目を配るべき相手が突然2人になり、彼なりに頭を巡らせ、スペースを消して防ごうとしたことだろう。想像もしない状況がピッチでは常に起こる。考えずにはいられないはずだ。あの最後のCKをやり直せたら、GKを潰せていたら、J1にもたどり着けただろうかと――。


 同じように25年たった今でも「ドーハの悲劇」を頭のなかで繰り返す。あそこでFWの自分が別のプレーをしていたら、まさかの失点もなく、日本代表にも自分にも全く違う人生が開けていたのではと。でも、取り戻せない1プレーによって、サッカーの時計が巻き戻らないことを僕らは悟る。傷つき、敗北の味を知り、人は大きくなっていく。


 まさしく「この経験を忘れずに」なのだけど、忘れずにやっていくのがまた大変。人間はつらさ・痛みを忘れるようにできている。でなければ生きていけない部分もあるからね。悔しさも時とともに緩んでいく。ただし、ここは横浜FCにとって転落から「何回はい上がれるか」という場面の1つ。「もしも」と取り戻せない過去をたどるよりも、前へ。つらさを受け止めるだけでなく、その先を切り開くんだ。


 僕自身は43試合でベンチ入りし、いい準備のリズムはキープできた1年でもあった。でも先発ゼロで終わったことはサッカー人生で珍しいことで、悔しい。「後悔先に立たず」なのだとしたら、後悔を役に立たせたい。


 25年前も2018年も、ラストプレーのCKでの暗転、悲劇。まったく、サッカーなるものは僕に喜びを与えてくれつつも、ときに残酷なこともしてくれる。だからこそ面白い。痛みを知る人間の方が強くなれる。その必要な痛みが、生きている実感もくれる。当面、やめられません。来年も続けるしかないね。