BOA SORTE KAZU

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BOA SORTE KAZU

“サッカー人として”  2018年06月08日(金)掲載

“サッカー人として”
2018年06月08日(金)掲載

まだ10日もある

 代表戦を戦い終え、ユニホームを持ち帰ろうとすると用具係に「次回にしてもらっていいですか」とよく制止されたものだった。「いや、次に呼ばれなかったらどうすんだよ」と毎回、振り切って頂戴していた。自分には1戦1戦が特別だったし、どの試合にも勝負をかけていた。「だからその証しが事務所倉庫に山となって積まれているよ」とマネジャーは苦笑いする。


 先月末のワールドカップ(W杯)壮行試合のガーナ戦前。入場を待つ選手の集中でみなぎったいい顔に、自分もあのしびれる感覚とともにあったことを思い出した。勝たなければ。ゴールしなければ。プレッシャーで自分を追い詰め、すさまじいハイテンションが襲う。それがピッチに踏み出すと、すうっと緊張感がやわらいでいく。あれほど幸せな時間はそうそうない。


 ガーナとは1994年、名古屋と神戸で連勝し、僕は1戦目で2得点、2戦目でもゴールした。当時の相手の背番号10番が、今回来日したアッピアー監督。ものすごくうまかった。アフリカ勢といえば前年に国立競技場でコートジボワール戦(1-0)でも延長で決めたっけ。ヤスさん(三浦泰年、現J3鹿児島ユナイテッドFC監督)のクロスを高木琢也・現J1 V・ファーレン長崎監督がつないだ所へ……。


 その場面をドログバが覚えていた。「子どもとして見ていたよ」とW杯抽選会で会った際に懐かしんでいた。あのゴール、このプレー。勝利後夜通し歌い明かしたことまでも、代表にひも付けされて思い出せる。


 3大会連続出場の選手もいる今回の代表を「代わり映えしない」という人がいる。それは彼らがそれだけ特別であることの裏返し。追い越すのが大変なんだろうね。抜かれないだけの努力を欧州で積んできたことをW杯で証明すると、彼ら自身が燃えているだろう。


 初戦まで約10日、選手は10日「しか」でなく「もある」と長く感じるものだ。10日もあればコンディションも体も変えられるよ。しかし香川真司選手もいつしか29歳、あっという間だね。そりゃあ僕もあっという間に51歳になるわけだ。


 選ばれて立つ者にとって、代わり映えのない代表戦など存在しない。特別な舞台、重みを楽しんでほしい。僕もサランスクでエールを送りつつ、しばらくは練習とW杯に専念します。