BOA SORTE KAZU

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BOA SORTE KAZU

“サッカー人として”  2016年03月25日(金)掲載

“サッカー人として”
2016年03月25日(金)掲載

環境を自分色に染める

 サッカー選手の場合、同じクラブに3年とどまることの方が珍しい。それだけ今はビジネス色が強くなっていて、海外では特にそう。65億円だとか、ものすごい金額で中国リーグへブラジル人が移籍してもいる。


 お金がもたらすこのダイナミズムが花を咲かせるのは10年先だったりもする。国際的な選手を間近でみた中国の10代の少年、同じピッチでプレーした20歳ころの若者は、相当に感化されてレベルアップすると思う。僕もストイコビッチと一緒のピッチに立ったころは、自分もピクシーになって彼のリズムを体得したかのような心地になったもの。


 「お金で買われて」という批判もある。でもね、もし僕のトレーナーに「5倍の給料を出す」という雇い主が現れたら、僕だって引き留められません。むしろ「行った方がいいぞ」と言うだろう。彼の生活がどれだけ楽になるかを考えるとね。


 同じ仕事で報酬は10倍にしますとの誘いがあなたにきました。どうします? 新天地が海外だと、ちょっと即答できない? すみかが変わり、慣れない言葉や環境が気にかかる人もいるのかな。僕はほとんど、ためらわない。お金がすべてなわけではなく、それだけの額は自分の色々な面が評価され、価値を認められたしるしでもあるからだ。


 15歳からブラジルでいろんな町に身を置き、大抵のことには慣れっこになっている。ジャウーは人口10万人、マセイオだと100万人くらい。これがサンパウロとなると1千万人超えの大都市。でもマツバラにいた時の町、カンバラは2万人ほどしかいない。ほんとに閑散としていて、ホテルときたらもう……。ある地方のJリーグクラブは「すごく田舎なんですよ」と移籍した仲間から聞かされ、遠征で行ってみたけど、「カンバラに比べりゃ何でもあるな」と平気でいられたものね。


 ブラジルでは選手もクラブも「てっぺん」だけを見ていた。今の場所を去る寂しさより、ステップアップできる喜びが大きかった。試合をできる幸福感が、ささいな環境のことなど忘れさせてくれる……。結局、今もあのときのままですね。


 前に手にしていたものがなく、困ることもあるだろうけど、どこかで似たものを見つけ、仲間も作って。どの町へ越したときもそうだった。環境を自分の色に染める術をいつしか身につけたとでもいうか。環境なんてものは、自分が作ればいいと思っているから。