BOA SORTE KAZU

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BOA SORTE KAZU

“サッカー人として”  2015年06月19日(金)掲載

“サッカー人として”
2015年06月19日(金)掲載

気持ち100%、力は8割

 4月末のリーグ戦で右脚を痛めてから約8週間。ようやく先週からチームの紅白戦に出場して、15日の練習試合ではゴールも決められた。復帰までかなり時間がかかったけれど、リーグ戦は11月までの長丁場だ。ケガを悪化させないためには慎重に進めた方がいい。


 検査で異常はみられない今も、痛みが完全になくなったわけじゃない。もしかすると負傷したときの感覚を脳が覚えていて、その怖さで痛みを感じているのかも。不安が消えない中でいつ復帰するか、どうプレーするかの判断は重要だ。ポイントは「7、8割の力でベストを尽くす」こと。


 ベストを尽くす=百パーセントを出し切る、と考えるのが一般的だろうし、百パーセントじゃないと気持ちが乗らない選手もいる。ただ、それはケガの再発につながる。だから体の使い方を工夫してチームに貢献する。そこは経験だね。


 それにこれはケガ明けのときに限った話じゃない。フルパワーだと、どうしてもミスが増えるものだ。野球でも適度に力が抜けたフォームの方が、より速い球を投げられるというしね。もちろん勝利を目指す気持ちは百パーセントで、体は8割でコントロール。そのさじ加減は簡単じゃない。


 わかりやすいのはG大阪の遠藤保仁選手だ。試合前のウオーミングアップからして7、8割の力でやっている。サボっているわけじゃなくて、1対1の守備もしっかりやるしボールを奪うのもうまい。あの脱力感が素晴らしいプレーを続けるコツだろう。まさに8割で全力を尽くす達人だ。


 対照的な例が、昨年のワールドカップ(W杯)準決勝でドイツに1-7の大敗を喫したブラジル。いつもサンバのリズムで軽やかにプレーしている人たちなのに、試合前の国歌演奏から涙を流すほど気持ちが入りすぎていた。地元開催のW杯という重みを背負って、百パーセント以上の力を出そうとしていたのだろう。


W杯ロシア大会予選初戦でシンガポール相手に無得点に終わった日本代表も、次はもっと攻めなければと前のめりになる必要なんてない。得点への意欲は大事だけれど、皆がゴール前に突っ込めば点が取れるわけでもないし。冷静に、程よい力加減でベストを尽くしてほしい。