BOA SORTE KAZU

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BOA SORTE KAZU

“サッカー人として”  2011年12月02日(金)掲載

“サッカー人として”
2011年12月02日(金)掲載

消化試合なんてない

 優勝や昇格の命運を握る一戦の緊張感やモチベーションというものは、いつまでも忘れないものだ。雰囲気の感触がまるで麻薬のようでね。


 柏レイソルに名古屋グランパス、ガンバ大阪と、J1は最終節まで3チームに優勝の可能性が残った。名古屋には昨季の優勝、ガンバ大阪には2005年に最後の最後で頂上の座についた経験がある。ガンバ大阪は過去にこうした状況をものにしたことも、落としたこともあるはず。そんな10年を支えた遠藤保仁選手なり二川孝広選手なりが、チームに安心感やアイデアを与えるだろう。


 横浜FCでもフランサと一緒に紅白戦をするとよく分かる。経験とあふれる発想に引き寄せられ、一体化した気になり、勇気をもらう。そんな力を発する存在として名古屋にも闘莉王選手らがいる。柏は選手に優勝経験が乏しいけど、ネルシーニョ監督は優勝を知る人だ。


 最終戦の相手にすれば「目の前でやすやすと優勝させるか」とハングリーさを力に変えてくる。2007年、横浜FCが浦和レッズの優勝を阻止したようなことが起こりうる。あんな気持ちいいこと、ないからね。最後の最後まで分からないよ。


 月並みだけど、普通でない試合で「普通のプレー」ができるかどうかだね。試合に至る日々には「流れ」というものがある。結果を出してきた流れ、勝とうが負けようが、変わらずやってきたことの集積としての流れ。それを続けること。明日は特別だから今日は早く寝る、ではなくてね。3チームとも今まで通りの過ごし方をした結果として、今の場にいるわけだから。


 平常心でいつも通り、全力で。シンプルな臨み方を僕はお薦めします。1990年ワールドカップ(W杯)優勝メンバー、元ドイツ代表のリトバルスキーからも聞いた。決勝でベッケンバウアー監督はどんな声をかけたのか。「ピッチに行って、楽しんでこい」。至ってシンプルだったって。


 サッカーは「1-0のスポーツ」なんだと思う。得点はなかなか入らない。地道にボールをつなぎ、細かく守備をやり、一つのゴールまで長い時間がかかる。1点入るのが最後の数分、それでOK。これをまどろっこしい、割に合わないと感じる人もいる。それでも「コツコツ続けた先に一ついいことがある」という発想なんだ。


 勝ち点1、いや、ワンプレーの差。すべてが終わり、あのとき1得点でも……、と「たられば」を浮かべても決してひっくり返らない。それは勝負の厳しさ。この世界には消化試合も、消化で済ませられるワンプレーもない。そう感じなければプロはやめるべきなんだ。